「ひなちゃん、ちょっと」


ぐいと手首をつかまれ、廊下に連れ出された。


浅野先輩は、いつになく真剣な面持ちで。


「大変だ。根岸の野郎、退学届出したみたいだ」


「えっ!?退部じゃなくて?」


「うん。退学。さっき、あいつの担任に呼び出されてさ。最近変わった様子はなかったか?って聞かれたんだよ。

 で、なんでそんなこと尋ねるのか聞いてみたら、こっそり教えてくれたんだ、退学届のこと」


思わず口を手で覆ってしまった。


どうして。


どうして、そんないきなり退学だなんて。