「……なんでもねぇっつってんだろ」


「お前、いい加減にしろよ。

 何があったか知らないけど、今のはやり過ぎだぞ。

 下手したらひなちゃん、大けがするところだったじゃないか!謝れ!」


いつになく真剣に声を荒げた浅野先輩に、びくっとした。


美術室が一瞬しんと静まり返った。


そして。


根岸先輩は、一瞬、わたしを見た。


なにか、言いたげな瞳で。


どきっとした。


「くそっ!」


根岸先輩は、机の上に置いてあった油絵具を手で払いのけると、美術室を出て行ってしまった。