浴場に入る前から臭うのは硫黄のにおいで、鼻につく香り。
中は広くって、いわゆる岩湯だった。
身体を洗って湯船に浸かる。
少し熱いお湯は冷えた身体を直ぐに暖めてくれる。
「はぁー」
つい口をつくのは安堵のため息で、無事に冬休みを迎えられた喜びでいっぱいになった。
…本当に冬休みナシなんてならなくて良かった。
「温泉広ーいっ!」
湯船に浸かる私の耳に届いたのは、入浴に来た女の子3人組みの声。
聞くつもりなんかないけれど、楽しそうに話しているのがやたらと耳についてしまう。
「ねぇねぇさっきさぁこの旅館に凄くかっこいい人いたんだ!」
「…へぇ」
「ちょっと信じてないの?今度見かけたら、教えるから!そしたら声掛けようよー」
「アンタどんだけ飢えてんのよ?」
私の近くで話す彼女達は、誰かの話で盛り上がっていて、正直ちょっとうるさい。
露天風呂に移動しようかな…
そう思った矢先…
バシャッ
顔に掛かったお湯。


