一通り廻って旅館に戻る頃には、日も傾く頃合いになっていた。
薄暗くなって提灯に灯りが灯って、より雰囲気が出てくる。
寒さが身体に沁みて鼻と耳がじんじんとしていた。
「飯が7時からだから先に風呂でも入るか?」
部屋に着いた時の柾樹の言葉に時計に視線を向けた。
今はまだ5時だから2時間ある。
「そうだね」
私はそう告げて鞄からお風呂セットを持って、部屋を後にした。
この旅館には内湯と露天があって、1日交代で男湯と女湯が代わる変わるらしい。
うーん。
全部制覇したい私としては、明日早起きして帰る前にも入りたい。
どうしよう。明日7時くらいに起きたら入れるかな…?
でも起きれるかなぁ…
考えながら歩いていた私の頭をこつんと小突いた柾樹。
「じゃぁまた後でな」
「うん、じゃぁまた後でね」
いつの間にか温泉の入り口まで来ていて、柾樹とはそこで別れて、女湯の暖簾を潜った。


