「でもそれは、柾樹が…」


「俺が、何?」


ごにょごにょと言葉を濁らせる私をニヤリと笑った柾樹。


…その顔、絶対に私に言わせるつもりなんでしょう?


「…柾樹…が寝かせてくれなかった…からでしょう?」


うぅっ…顔が熱くなって更に恥ずかしくなってしまう。


そう。
旅行前日なのに、柾樹に翻弄されて寝かせてもらえなかった私。


「…でもお前、こんな時だけは元気だな」




「……」


そこは否定できないけれど。
でも、旅行とか楽しみじゃん?
わくわくして早く目が覚めるとかあるよね…?


「まぁそれが彩音らしいけど。さ、旅館に荷物置きに行くんでしょ?」


羞恥心でいっぱいになりながらも、妖艶に笑った柾樹の差し出された手をぎゅっと握って、旅館に向かった。