---5月

クラス替えから1か月が過ぎた。

変わらぬ毎日が過ぎているが、ただ一つ問題がある。


「ねえ、愛菜ちゃん」

「なに?」


俺と愛菜の間に座っている眼鏡野郎だ。

チャラチャラ喋りやがって、マジでムカつく。


「もうすぐ体育祭だよね?楽しみだな~」

「原田くんって運動得意なの?」

「まあね。これでも、昔はバリバリのサッカー少年だったんだ。中学のときなんか、県の選抜に選ばれたぐらい。運動神経は良い方だぜ?特に足は速いんだ」

「そうなんだ~。あ、そう言えば莉緒もめっちゃ速いよね?去年もリレー、アンカーで走ったし。今年も走るのかな?」


突然の愛菜の視線に思わず目を反らした。


「…さあ。」

「へぇ、あんた足速いんだ?じゃあさ、勝負しようよ?」

「…勝負?」

「そう。確か、アンカーってタイムで決まるよね?今日の体育の時間、タイム測るって言ってたし。いい機会じゃん?」


意味わかんねー。誰がチャラ男と勝負するかよ。


「…するわけねえだろ。勝手にやってろ」

「へー、負けるのが怖いんだ。吉瀬くんって以外にヘタレなんだね」

「あ?今何つった?」

「莉緒!!原田くんも、止めなよ…」

「うるせー!!愛菜は黙ってろ。…勝負、してやるよ」


受けてやろーじゃねえか。

俺をヘタレ呼ばわりしたこと、後悔させてやる。


「吉瀬くん、楽しみにしてるよ」

「おいみんな、席に着けー。授業始めるぞ」


愛菜の心配そうな顔が目に入ったが、無視して机に顔を埋めた。