最初に目にしたのは"白"だった。






正確に言うと病室の白い天井だ。

俺は目が覚めても暫く動く気にはなれなかった。
目だけで辺りを見てみるが、そこは明らかに病室で、つまり俺は生きて…る?

これは現実なのだろうか。

目が覚めてから早15分。
いまだに生きているのが信じられない。

そこで、実に古典的だが、自分の頬をつねることにした。
まずは手を出さねば。ずっと体の横に置いてあった右手を顔の近くまで持ってくる。右手と一緒に付いてくる点滴の管が煩わしい。目の前で少し指を動かすと、若干指が痺れていて随分久しぶりに身体の一部を動かす気がした。
次にそっと乾燥した頬に触れ、一気につねる。


「、ぃ…いふぁい…」

どうやら肌だけではなく喉も乾燥しているらしく、発した声は擦れ気味だった。これもまた、久しく喉を使っていなかった証拠だろう。


(いったい俺はどんだけ寝てたんだ…)

部屋の中を見ようとして首を少し傾ける。
するとサイドボードの上で若干埃を被っている携帯を発見した。
まだ覚束ない手つきでサイドボードに手を伸ばす。
電源を入れて、待ち受け画面に表示された日付を見て、危うく携帯を落としそうになった。