「それで妃芽が小6の時、耐えきれなくなった母親が妃芽を連れて夜逃げしたんだ。…俺の前から突然消えたんだ。」



朝井さんの顔を見ているだけで、こっちまで心が痛くなる…


悔しくて、やるせない。


その顔からはそんな感情がにじみ出ていた。


「…妃芽の母親は誰にも何も言わずにいなくなったから、俺には連絡をとる手段がなかった」

「……」


「妃芽も父親から逃れるために、母親から誰にも言うなと口止めされていたらしい…」



“俺にくらい言ってくれても良かったのに、な”と続けた朝井さんにはもう、何も言えなくて…


そんな…
そんな悲しい運命があっていいの…?


朝井さんの話を聞き終わった時、涙が溢れて止まらなかった…

何も言ってあげれなくてただ泣いていた。