その日は朝から大忙しだった。


「ね!私の時計知らない?」


「知らね。てか、自分ん家置いて来たんじゃねぇ?」


そう言って私の探し物を手伝ってくれないのは柾樹。


「でも…昨日は確かに着けてたもん」


お気に入りの腕時計。


ブレスレットみたいなデザインで、ハートのチャームがついたピンクゴールドのやつ。


いつも柾樹の部屋に泊まる時は、アクセサリーとかテーブルの上に置いてあるはずなのに、今日に限って見当たらない。



「あ、コレ?」


洗面所から手だけ出してぶら下げてるのはまさしく私の腕時計。



「あっ!それそれっ!ありがとう」


勢いよく洗面所まで行き受け取る。


「…昨日風呂入るときにでも洗面台に置いたんだろ…」


柾樹のいつもの呆れ顔。