分娩室にひとり放置された私は、静かになった分娩室の天井を見ながらたった今自分の身に起こった出来事について反芻した。

出産してしまった。

この私が。

涙は出なかった。

涙よりも笑いがこみ上げてきた。

ひとりになった今も、おかしくて笑いが止まらない。

しわくちゃの小僧の体も、必死に泣く姿も、タオルに包まれてちっちゃくなっている姿も、それを慣れない手つきで抱える夫も、せっせと産後の処置をする院長も、ここでこうして放置されている自分も何もかもが面白い。

面白い、面白い。

小僧が生まれた。

10月10日。

小僧誕生。

ん?10月10日・・。

十月十日。

まさにトツキトオカである。

なんという偶然。

きっと今頃、家族たちは小僧を見て大騒ぎしているはずだ。

ここにいる私のことなんてちょっと忘れているかもしれない。

でもまあいいや。

早くちゃんと顔を見たい。

やっぱり鼻は私に似ちゃったのだろうか。

とにかく無事に生まれてよかった。

小僧、ありがとう。

それから、つわりが辛いだの体が痛いだの愚痴ばかりだった私をいつも励まして明るく元気づけてくれた夫にただただ感謝である。

まあ、生まれたら生まれたでまた色々無理難題押し付けることになりそうだが、優しい夫ならきっと許してくれるだろう。

フフッ。

笑いが止まらない。

私のトツキトオカは、こうして幕を閉じた。



分娩室の扉が開いて、小僧を抱いた夫が入ってきた。

これから私の育児ライフが始まる。