静かな駅のホームを抜け自宅への街路を歩いていると、よく見知った顔を見つけた。
“ウソ……”
思わぬ再会に、ミズキは固まってしまう。
ミズキの元カレ·宮原ヒデト(みやはら·ひでと)の姿があったからだ。
ヒデトは駅に用があるのだろうか、こちらに向かって歩いて来るが、うつむいているせいでミズキの存在には気づいていない。
ミズキは気まずい気持ちだった。
ヒデトと付き合っていたのは、中学の時から高校一年の夏休みまで。
彼とは同じ中学出身なのだから、自宅最寄駅のあるこの近辺で出くわすのはおかしなことではない。
交流の有無など関係なしに、普段この辺で中学時代の同級生を見かけることも普通にあるのだから。
けれど、ヒデトだけは別なのだ。
高校卒業を間近に控えていた時、ミズキはヒデトにやり直したいと頼まれそれを断ったから、なおさら……。
その時ミズキの心はヒデトになく、ナナセを想っていた。
だからこそ今も、ミズキは素知らぬ顔でヒデトには声をかけず、無言で彼の横を通り過ぎようとしたのだが……。


