散々迷って迷いあぐねたあげく、

ミズキはこのノートの手記を、両親には隠していくことに決めた。

マナにこのノートを見せた時、彼女は自分のことのように怒ってくれ、犯人が普通にのうのうと生活していることが許せないと言ってくれた。

マナは、このノートのことを両親だけじゃなく警察にも言った方がいいと強く言っていた。

だが、ミズキにはそんな気はなかった。

そんなことをしても、リョウは生き返らないのだから……。


ミズキだって、リョウのことを“諦め”たくはない。

けれど、最近やっと少しずつ笑ってくれるようになった菜月と大成の気持ちを乱したくはないのだ。


彼氏のナナセは、そういったミズキの気持ちを理解してくれている。

ナナセは、過去と向き合うミズキをそっと見守っていてくれる。

それでいいと思っていた。


ミズキにだって、リョウをイジメた犯人に怒りはある。

正直、犯人を殺したいと思ったことだって…………。

けれど、そう割り切らねば、生きていけない……。


あの時、“リョウの分まで生きる”と誓った自分を、大切にしたかったのだ。