「メイちゃん、おやすみ」
ベッドにもぐってから、いつものように小さく声をかけ、ミズキは目をつむる。
すると、気を抜くと聞き漏らしてしまいそうなほど小さな声で、メイがミズキの名を呼んだ。
「……ミズキ……」
「ん?」
ミズキはそれからしばらく、メイの反応を待っていた。
だが、メイからは何も返ってこなかったので、寝言だと思い、寝ようとした。
夢を見そうになるくらい、ミズキが深い眠りに落ちかけた頃、メイがミズキに抱き着いた。
反射的に、ミズキは目を開く。
メイがこの家に住むようになってからもうすぐ一ヶ月になるが、こういうことは初めてだった。
「メイちゃん?
どうしたの?
眠れない?」
眠いのをこらえ、ミズキはメイを優しく抱きしめ返す。
「ミズキ……。今日、どうして、帰り遅かったの?」
ミズキの背筋がピンと張り詰める。
翔子との会話が、嫌でも脳裏によぎってしまう……。
「ジム行って、その後ナナセ君ちに行ってたから……」
「それだけ……?」
「それだけだよ」
ミズキの鼓動は激しくなる。
“メイちゃんにだけは、本当のこと知られたくない……!”
翔子のことは絶対に言いたくなかった。
メイを、これ以上傷つけたくない。


