しゃぼん玉


空調はちょうどいい温度になっているはずなのに、二人の体は熱かった。

「ナナセ君。今の、もう一回言って?」

ミズキの潤んだ瞳が、透き通った声が、唇のツヤが、とても甘かった。

ナナセは頭の芯から熱を感じる。

「付き合ったばかりの頃より、好きだよ」

次第に激しくなる心臓の音を無視して、ナナセはミズキの唇にそっとキスをした。

女の子とこうするのは初めてだから、上手に出来ているのか分からない。

内心、前の彼氏と比べられていたらどうしよう、と、不安にならなかったと言えばウソになる。


けれど、そういう心配や予備知識も、どこか彼方へ飛んでいく。

今まで感じたことがないほどあたたかくて柔らかくて、甘い感覚。


触れ合った時、ミズキが漏らしたため息を耳にして、ナナセの頭はおかしくなりそうだった。

今、家庭教師をしろと言われたら、得意科目でも教えられない自信がある。

そのくらい、ナナセは今、ミズキの存在しか感じられなかった。


愛おしい。

ただ、そう思った。


初めてした好きな子とのキスは、まるでロケット花火のように弾ける。

線香花火のごとくジワジワと、熱が続いた。


キスをした後、二人はしばらく抱きしめ合って過ごしたが、ミズキのケータイに菜月からの電話があったため、ナナセはミズキを自宅まで送っていくことにした。


ナナセは夏休み中に運転免許を取ったので車にも乗れる。

しかし、少しでも多くミズキと一緒の時を過ごしたかったので、あえて歩いて彼女を送ることにした。

ミズキも、その提案に嬉しそうにうなずく。


ミズキが帰宅したのは、夜遅い時間だった。