しゃぼん玉



翔子と会った後。

食事をする気を失ったミズキは、ナナセに誘われ彼の家に行っていた。


ナナセは最近、ミズキのために、肌触りの良いフカフカのクッションを用意していた。

「俺の部屋、物が少なすぎるもんね。

ミズキちゃん、居心地悪いんじゃないかと思って……」

「ありがとう、嬉しい」


ナナセの部屋にこれといって不満はなかったが、ミズキは彼の気遣いが嬉しかった。


メイの心の奥に関わることを知って、ミズキは衝撃を受けていた。

どんな顔で、家に帰ればいいのだろう。

メイにはウソをつきたくない。

でも、本当のことを話す気にもなれない。


ナナセは何も言わず、ミズキを落ち着けるため、彼女にハーブティーを出した。

「ありがとう」

ナナセの言葉足らずの優しさが、本当に心地いい。

ミズキは今、ほんの少しだけ、ナナセに寄り掛かりたいと思った。


二人並んでソファーに座ったまま、無音の時が過ぎる。


「……」

ミズキはナナセが用意してくれたクッションを抱きしめ、何も言わずに彼の肩に頭を乗せた。

急に近付いた距離に、ナナセの胸は激しく鳴る。

ミズキを抱きしめたくなったけど、誰もいない屋内でそんな風にしたら、冷静でいられる自信がない。


「ナナセ君……。ちょっとだけ、抱きしめて?

そしたら私、がんばれるから……」

「……わかった」

熱くなる顔に意識が乱されそうになりながらも、ナナセはミズキの背後から彼女の体を抱きしめた。

ミズキの体温が、ナナセの心を落ち着かせてくれる。


背中でナナセの胸を感じ、ミズキはスッと目を閉じた。