菜月は、愛しさを込めてメイを抱きしめる。
まだ、星崎家の人間に対して距離を置いているであろうメイの心を察し、菜月は言った。
「メイ。いきなり家族になろうとしなくてもいい。
これから先、行き違いとか、すれ違いもあるかもしれない。
ただね、ここではうーんと甘えていいんだよ。
ここは、メイの居場所だから。
私は、メイのお母さんだから。
お父さんに言いにくいことは、同じ女のお母さんが聞くから。
メイは、私達の大事な家族なんだから。
本音で話してほしい。
お母さんも、そうするから。
それでケンカしたって、仲直りすればいいの。
ミズキもお父さんも、私と同じ気持ちよ」
「……じゃあ……。もうちょっとこうしてて……」
「うん、いいわよ」
本当の母親には抱きしめてすらもらえなかった。
放置されていた。
だけどここには、幼い頃から求めていた愛がある。
メイが欲しがってやまなかったぬくもりがある。


