「この奥さんとは、大学に入ってから知り合ったの。
友達……ううん、親友と言えるくらいに、私達は仲が良かった。
ちょっとワガママなところもあったけど、それも憎めないくらい頼もしくて、優しくて。
彼女がいたから、私は知らない人ばかりの大学生活を楽しむことができた。
………私達が19歳の頃……。
彼女は、バイト帰りに性犯罪にあって……。
その頃彼女は、連絡もなく急に大学を休んだりして……。
事件から半年後、私にその話をしてくれた。
当時彼女は付き合っていた恋人と別れて、その後の異性関係もうまく築けなくなって……。
仲良くしていた男友達とも話せなくなって……。
卒業して社会人になってからも、その傷は癒えなくて……。
私も、時間がある日は彼女の家に泊まりに行ったりしてた……。
なんでこんなに優しい子が、知らない男のために何年も苦しみ続けなきゃいけないんだろう!って、すごく悔しかった……。
私達が社会人になって少し経った頃、彼女は、過去を理解して支えてくれる男性に出会って、こうして笑えるようになったの。
最近やっと、旦那さんと同じベッドに寝られるようになったって言ってたわ。
それまで二人は、寝室を分けていたの。
旦那さんと手をつなげるようになったのも、二年くらい前のことで……」
菜月の声のトーンは低くなり、表情が雲ったのを見て、その話は本当のことだとメイは思った。


