メイの首には、清からもらった水色のマフラーが巻かれている。
菜月は、真っ青な顔をしているメイの代わりにそれを取り、メイをリビングのソファーに座らせた。
リビングはダイニングとつながっているため、菜月が用意していた夕食の匂いがメイの鼻をくすぐる。
メイが好きな照り焼きの薫(かお)り。
その匂いをかいだ瞬間、メイの目には涙がにじんだ。
メグルの家で世話になっていた頃、
一度だけ清の手伝いをして一緒に作った、照り焼きハンバーグ……。
清が病院に運ばれた日に清と交わした約束を忘れたわけではないのに、メイにはその約束を果たす自信が持てなくて……それがつらかった。
菜月はいったん調理の火を止め、メイの気分が良くなるよう、コップに水をくんでリビングに戻って来た。
「今夜は、メイが好きな照り焼きハンバーグよ。
でも、体調が悪いのなら無理に食べなくていいからね。
お弁当用に取っておくし、また別の日にいくらでも作れるから」
メイが泣いていることに気付き、菜月は黙って、メイの頭をなでる。
菜月からコップを受け取り、メイは一口水を飲んだ。
ほどよい冷たさをノドの奥に感じながら、菜月に質問する。
「……本当の愛って何?」
メイには分からなかった。
好き合う者同士がセックスをすれば愛なのか?
ただそばにいるだけではダメなのか?
リクとも必ず、世間の恋人同士のような関係にならなくてはいけないのか?
体の関係を持たなくては、愛は成立しないのか?


