しゃぼん玉


男が完全にいなくなったのを確認してから、リクはメイに近付く。

「メイ、大丈夫?」

「……」

「ごめんな……。俺が一人にしたせいで、怖い思いさせちゃったな」

リクはメイをゆっくり立たせ、彼女の小さな顔を覗き込んだ。

メイの瞳は涙に濡れ、唇は小刻みに震えている。

リクの胸は瞬間のうちに熱くなった。

「メイのこと、やっぱり放っておけない……」

小さな子供をなだめるように、メイの頭をなでた。

リクのぬくもりに、メイの気持ちは次第に落ち着いてくるけど、ミズキやメグルに接する時のように、リクに対しては無防備になれなかった。


“オトコガコワイ――。

オトコハキケンナソンザイ”

メイの頭の奥で、そんな声が響いている。


幼い頃の、何も知らなかった自分に戻りたいと、メイは思った。

そしたらきっと、世の中の女性のように、恋に幸せを見つけることができたのかもしれない……。