しゃぼん玉


メイのことを良い素材だと思った男は、彼女に無視されたことなど気にせず、懲(こ)りずに食い下がった。

「頼むよ~。人助けだと思ってさ!」

軽い口調でそう言い、メイの肩に触れる。

「ひっ……!」

メイの口から小さく悲鳴が漏れた。

怖くて大きな声が出せない。

こんなことは初めてで、どうしたらいいのか、分からなくなった。

目の前がぼやけるほど困惑する。

動悸(どうき)で胸が苦しくなり、うまく呼吸ができない。


“何これ……!”


万引きをしていた時も、初めてタバコを吸った時も、こんなに緊張しなかった。


男は、メイがグラビア出演の話に迷っていると思い込んだ。

メイの肩に手を乗せたまま、彼女に顔を近付けようとする。


“怖い……。

気持ち悪い!


助けて……!!

ミズキ! リョウ……!”

心の中で叫ぶ。

メイの全身は硬直し、小刻みに震えた。