しゃぼん玉


ファーストフード店を出て三人でメグルの家まで帰宅する。

そこから先、リクとメイは二人きりになった。


日はもうすっかり沈んでいて、星が綺麗な夜である。


「メイ、これ」

リクは、バイト先の居酒屋でもらった焼き鳥入りのビニール袋をメイに差し出した。

「ありがと。みんなで食べる」

メイは嬉しそうにその袋を手にして、前を向いた。


もう、こうしてメイに差し入れをする必要がない。

それは分かっていたけれど、今までの習慣と、メイに会いたい一心で、リクはこうしていた。


真冬に比べて少しだけ暖かくなった夜風を頬に感じつつ、メイはバックの中に手を入れ、封筒を取り出す。

それは、以前リクにもらったバイト代入りの封筒。

メイはそれをリクに返した。

「金はあった方がいいだろ?

それに、一度あげたモンだし、別に返してくんなくてもいいから」

「そういうんじゃないよ。

元から、もらうつもりなんてなかったし。

だから返す」

「そっか……」

リクは寂しそうな顔で封筒を受け取った。

メイはその金に全く手をつけていない。

メイはきっと、翔子のようになりたくなくて金を使わなかったのだろう、と、リクは考えた。


メイがミズキの妹になって依頼、リクは翔子の話を一切口にしなかった。