しゃぼん玉


ミズキはうつむいて涙を流すことしかできなかった。

翔子に話しても、何にもならなかった。

ただ、メイの傷を深くするような言葉しか聞けなかった……。

少しでも、翔子の中にメイに対する未練があれば、救われたのに……。


翔子はそれ以上話すことなく、立ち上がって店を出ていく。

ミズキは耐えられず、翔子を追いかけた。

店の客達が、目を丸くしてミズキを見ている。

ナナセはミズキの後を追った。



ミズキは歩き去る翔子の腕をつかみ、滝のような涙を流した。

「翔子さん……!

本当に、メイちゃんのこと好きじゃなかったんですか!?

これっぽっちも!?」

「……私だって、好きでこんな人生を選んだんじゃないわ。

メイの父親と結婚した頃は、幸せな家庭を築こうと思って頑張ってた。


でもあの子は……。夫のことも奪ったの。

心と体、両方をね」

「そんな……!

メイちゃんがそんなことしてたなんて、信じません!!」


通行人達が、ミズキと翔子を遠巻きに見ている。


「信じなくてもいいけど、本当よ。

あの子にそんな気があったかどうかなんて、どうでもいいの。

あの子が実の父親と性交渉してたのが問題なの。

私は今も、それが許せない……」

「……せ…い……?」

ミズキの体からは力が抜けていき、その場に尻から座り込んでしまう。

翔子はそんなミズキに同情めいたまなざしを向け、去っていった。


「ミズキちゃん、大丈夫?」

追いついてきたナナセは、座り込むミズキの肩を揺らす。