そんなナナセの様子を見て、翔子はクスッと笑い、
「その調子じゃ、心配なさそうね」
と、再び飲み物を口にした。
困惑するミズキとナナセに、翔子はひょうひょうとした口ぶりで続きを話す。
「どういう意味か、分かるでしょ?
セックスしたら妊娠する可能性がある。
避妊をしていてもね。
万が一、夢を目指している最中に妊娠をした場合、中絶を勧めるわ。
産まない方がいい。
私はそれを後悔してる。
意地でも中絶しておけばよかった、
夢を捨てなければ良かった、
メイを見て、毎日そう思ってた」
「……」
「私は、あの子を産みたくて産んだんじゃない。
育てたくて育てたんじゃない。
ずっと、メイに夢を邪魔されたっていう気持ちが消えなかったのよ。
それだけじゃないけどね……。
私も好きで虐待していたわけじゃないわ。
出来ることなら可愛いがってあげたかったし、
独身の頃、自分に子供が出来たら絶対に可愛いがるんだって思ってた。
でも実際は、そんなにうまくいかないのよ……。
だから、あの子を養子に出して良かったって、心から思ってる。
私のためにも、あの子のためにも……。
やっと、長年抱えてた重たい気持ちが、軽くなったわ。
メイを引き取ってくれた星崎さんには、感謝してる。
たとえ施設に預けたとしても、メイとの親子関係は消えないわけだしね……」
「……そんな……」


