ジムの帰り道。
ミズキとナナセは食事をするため、繁華街に向かって歩いていた。
ギラギラ眩しいネオンの中、穂積翔子が一人で歩いているところを見つけた。
最後にもう一度、翔子と話がしたいと思い、ミズキは養子縁組の後に穂積家を訪ねたが、もう、翔子はいなかった。
メイを星崎家の養子にした後、翔子はどこかへ引っ越したらしい。
「ナナセ君、ちょっとここで待ってて?
私、あの人と話したい」
「俺も行くよ!」
ナナセと手をつないで人の波をくぐり、ミズキは翔子を追いかけた。
「穂積さん……!」
その名前を口にすると、ミズキは、メイに距離を置いていた頃を思い出した。
翔子はミズキの呼びかけに気付き、ゆっくりと振り返る。
「ああ……。あんた、あの時の……」
翔子の顔からは信じられないほど邪気が抜けていて、ミズキとナナセは内心驚いていた。
意外にも、翔子は穏やかな口調でミズキに応じてくれ、三人は近くのファーストフード店にて話をすることになった。
そこは最近出来たばかりの店で、学校帰りの女子高生がたくさんいる。
にぎやかで明るい雰囲気の中、頼んだ飲み物を前にして、翔子はタバコを吸いはじめた。
「メイのこと引き取ってくれて、ありがとね」
翔子の声や顔つきは、養子縁組の時と比べものにならないほど穏やかだ。
「一度聞いておきたかったんですが……。
メイちゃんを養子に出したこと、後悔していませんか……?
寂しくありませんか?」
ミズキの声は震える。


