高鳴る心音を胸に水着に着替えると、ナナセは温水プールの脇でミズキを待った。

5分ほど後に、同じく水着姿のミズキがプールサイドにやってくる。


アイリの時には何とも思わなかったのに、ミズキの水着姿を見た瞬間、心と体が過剰に反応してしまい、ナナセはミズキの顔を見られなくなった。

女の子は苦手。

そのはずなのに、ミズキは別……。

水着の生地。

隙間から見える豊かな胸や、滑らかな肌。

見るだけで分かる、柔らかそうな手足……。

心臓の音がミズキにまで伝わってしまいそうで、ナナセはミズキの方を見ず、先にプールの中に入った。


ミズキはナナセの気持ちを読み取り、意地悪心をいっぱいにしてプールに入り、水の中でジッと立っているナナセの腕につかまった。

「ナナセ君……。

アイリちゃんの時みたいに、いろいろ教えて?

私も、泳ぐの苦手なんだ」

「俺、泳ぎ下手だし、アイリちゃんにも大したこと教えてないからっ」

ナナセはミズキから顔を背ける。

「ふふっ、やっぱり可愛いね、ナナセ君」

ミズキは嬉しそうにナナセの顔を覗き込み、満足そうに笑った。

「可愛いなんて、嬉しくないよ……」

ナナセは涙目で眉を下げる。

その頬は、やはり赤かった。


もう少しだけ。

ミズキはナナセをからかいたくなった。

アイリにヤキモチを焼いたことは内緒にして……。