「おやすみ」

小さな声でささやき、ミズキは目をつむった。

眠っているはずのメイが、泣きそうな声でつぶやく。

「やっぱり私、生まれてこない方が良かった……?

生きてるだけで邪魔だったりして……」

「そんなことない。

生きてくれなきゃ嫌」

ミズキは、震えているメイを抱きしめる。

メイはそのまま泣き続け、ミズキの腕の中で眠りに落ちていった。


一方、ミズキの涙は引かず、眠ることが出来なかった。

穂積翔子があんなにあっさり、娘をいらないと言うなんて……。


ミズキがメイを妹にしたいと思ったのは、本当。

けれど、心の片隅では「翔子がメイを捨てるはずない」とも思っていた。

翔子とメイは、今まで一緒に暮らしてきた関係だし、血のつながった親子なのだから……。

メイも、そう思っていたのだろう。

翔子に突き放された瞬間、彼女は涙を見せなかったけれど、母親に捨てられたという気持ちになるのは当然だ。


“翔子さん。あなたはなぜ、メイちゃんを産んだんですか?

なぜ母親になったのですか?

メイちゃんのことを可愛いと思った瞬間が、微塵(みじん)もなかったのですか?”

その答えは出ないまま、やけに明るい月夜は流れてゆく。

ミズキは時々指先で涙を拭い、メイが抱えてきたものについて深く考えた……。