清の通夜が行われる日。
白っぽい灰色の雲だけが、空を覆っている。
まるで眠っているかのように布団に寝かされている清を見て、メグルは茫然としていた。
メグルがそうしている間、滝川家にはメグルの親戚や葬儀屋の人々が訪ねてきたため、一郎はその相手をしている。
滝川家で居候(いそうろう)していたメイは、そういう雰囲気に慣れておらず、居心地悪く感じていた。
唯一、気を許せる居場所だったはずなのに、今はまるで、見知らぬ人間の家にやってきたような気分だ。
清のそばにいたい。
けれど、滝川家の親戚達は皆、“この子は何?”と言うように、冷ややかな目でメイを見ている。
メグルは清の死を受け入れられず、周囲のことに気が回らない状態だった。
一郎も悲しみをこらえて葬儀の準備で忙しく動き回っていたため、今、この場にメイを守れる者はいなかった。
そんな空気に耐えらず、メイは家の外に飛び出した。
そこには、控えめな色の洋服を着たミズキの姿がある。
ミズキはメイの現状を感じ取り、メイが出てくるずいぶん前からこうしてメイを待っていた。
「これから、ウチに来る?」
「……」
ミズキは、黙ったままうつむいているメイの手を取り、自宅に向かって歩き出した。
メイは暗い表情のまま、ミズキについていく。
ナナセも、ミズキと一緒にここへ行きたいと申し出たのだが、
「今日はメイちゃんを含めて、お父さん達と大事な話をするから」
と言い、ミズキはナナセの付き添いを断った。
ナナセはそれに快くうなずき、ミズキのことを応援していた。
リクも、この日のことをミズキに聞いて、複雑な心境をもてあましていた。


