メイの言葉に何も答えず、清はいつものように目を細めて笑うだけだった。
そのまま穏やかな声で話し続ける。
「メイちゃんに出会えて、ばあちゃんは幸せ者だよ。
甘えてくれてありがとう。
料理おいしそうに食べてくれてありがとう。
メグルと仲良くしてくれてありがとう。
メイちゃんと過ごせて、本当に楽しかった……。
メイちゃんはメグルと同じ。
私の大切な孫だよ。
メグルと違って、メイちゃんは素直じゃなくて乱暴で、ずいぶん手を焼いたけど、すごく可愛い孫だった。
ずっと、愛してるからね……。
だから、自分を傷つけるようなこと、もう二度としないで。
それだけ、ばあちゃんと約束して? ね?」
清は小指を立てて、メイの方に向けた。
メイは自然な流れで自分の小指を立て、引き寄せられるように清と指切りをする。
「約束、だよ……」
清は優しく微笑み、そのまま瞳を閉じた。
心電図に映る線が下降して、清の生命が危険にさらされているのがわかる。
「ばあちゃん……!」
清の手をつかむメイを横目に、ミズキは涙を拭ってナースコールを押した。
その場で清の命は救われ、それから三週間は命を保つことが出来た。
メグルをはじめ、メイとミズキは、学校帰りに毎日お見舞いに行き、休みの前日には病院に泊まったりもしていた。
その間清は、目を開くことはあっても、一切話をすることは出来ず、年が明けて1月上旬。
病室のベッドの中で、清は静かに息を引き取った。
清は末期のガンにかかっていて、救急車で病院に運ばれた時にはもう、これ以上の延命は難しいとされていた。


