ミズキがこのノートのことを大成と菜月に黙っているのには理由がある。

これ以上、両親を傷つけたくはなかったからだ。


リョウは、首を吊って自殺した。

それを最初に発見したのは菜月だった。

菜月はリョウの死に様に出くわした時、発狂して気を失ったし、抜け殻のようになったフラフラの体で葬儀に出席していた。


自分がお腹を痛めて産んだ子供が、自らの意思で命を断ってしまう。

親にとって、これ以上辛いことはない。


大成も、リョウのことをとても可愛がっており、単身赴任中でも休みの日には自宅に戻り、リョウと野球観戦に出かけたりしていたものだ。

ミズキは幼い頃から料理やお菓子作りが好きだったので、そんな大成とリョウにお弁当などを持たせて、よく見送りをしていた。


そんな風にリョウを愛していた菜月と大成は、

リョウの死後、どんどん体重が落ち、食も細くなってしまった。

笑い声が溢れていた家の中も、殺風景な空虚さだけが漂うようになって……。


そんな両親に、リョウの自殺の真相を話したら、ショックで死んでしまうかもしれない。

ミズキは、それが何よりこわかった。