「ばあちゃんからメイちゃんに、お願いがあるんだ。
聞いてくれるかい?」
清は、力ない手でメイの指先をふんわり包み込むと、メイの方に顔を向けた。
その瞳は弱々しく揺れながらも、強い光を放っている。
それを見て、メイの胸はなぜか張り裂けそうな痛みと恐怖を感じていたが、何も気付かないフリをして清を見つめ返した。
「お願いって何?」
メイの口調はぶっきらぼうだったが、今までになかった暖かい色が込められている。
「……メイちゃん。人の命には限りがある。
人生は、長いようで、とっても短いものだよ。
だからどうか、幸せになることを諦めないでおくれ……。
今までの自分を、責めないでおくれ。
自分の心が求めていることに、素直に目を向けておくれ」
「……っ」
メイの頬には涙が伝い、それは数滴、清が寝ているベッドのシーツに染み込んだ。
「生まれてきた以上、幸せなことばかりじゃない。
嫌なこともたくさんある。
ばあちゃんもそうだった。
兄弟が戦死した時……。
あの子…メグルの親が亡くなった時……。
もう、生きているのが苦しくて仕方がないほどつらかった……。
幸せなだけの人生だったらどれだけいいだろうって考えたこともある。
メイちゃんも、メグルも、この先の人生で、つらいこと、悲しいことがあるかもしれない。
でもね、生まれてきた以上、誰もが幸せになる資格があるんだ。
生まれてきた以上、その生を生き抜かなきゃならないんだ。
どんな道でもいい。
メイちゃんはメイちゃんの道で、生きてほしい。
ばあちゃんは、ずっと見守ってるからね」
「まるでそんな、『もう死ぬ』みたいな言い方しないでよ……」


