しゃぼん玉


「ん?」

メイの目を見て、ミズキは優しく反応する。

「どうして、あの時私を警察に突き出さなかったの?」

「……メイちゃん」

ミズキは、メイが何の話をしているのかすぐに察した。

「警察に突き出すなんて、カケラも考えたことなかったな。

メイちゃん、そういう風に考えてたんだね。

……じゃあ逆に訊くけど、メイちゃんはどうしてあの時私に、リョウの画像を見せてきたの?

ずっと、気になってたんだ。

お金目当てではないでしょ?」

「金はあった方がいい……」

メイはうつむき、思っていることを話した。

「母親の元から逃げたかった。

安心して眠れる場所に行きたかった。

警察に捕まれば、それが叶うと思った。

なのにあんたは、私を逃がした……」

メイの瞳には、涙が溢れている。

ミズキはメイを、力一杯抱きしめた。

「だって、メイちゃん、悲しそうな目をしてたから……。

それに、警察に頼って問題が解決するとは思えなかった。

宇野君のことも、警察には言う気ないよ……」


ただ、皆が笑って幸せに暮らせたらそれでいい。

もう誰も苦しむことなく、健やかな生活を送れたら、何もかもが満たされる。

そしたらきっと、

命のありがたみを、

生きていることの意味を、

見出だすことができるから。

ミズキは心の底からそう思った。

そう伝えたくて、メイを抱きしめ続ける。