メイは、母·翔子の両親を探してみようと思ったこともある。
まだ見ぬ彼らからしたら、メイは実の孫。
頼めば、自分を引き取ってくれるかもしれない。
最悪、彼らに可愛がってもらえなくても、翔子がいない場所に行ければそれでいい、と、メイは考えた。
淡い期待は、打ち砕かれた。
翔子は、実の両親と絶縁していたからだ。
翔子の両親は、翔子が女優の夢を追うことに大反対していたのだ。
翔子は両親の説得にうなずくことはなく、結果、勘当された。
翔子の両親は、翔子が夢を諦め結婚したことも、メイを産んだことも、離婚したことも、知らない。
翔子は、親に勘当され夢を目指した時から、周りの誰にも頼らないと決めていたようだ。
そういった意思を、もっと形に表したかったのだろうか?
翔子は二十歳を過ぎてから、親と一緒だった戸籍から自分の名前だけを抜いて自分だけの戸籍を作り、親に頼らない気持ちを貫いた。
そのため、メイが調べても、翔子の両親の所在や名前を見つけることはできなかった。
戸籍から祖父母の存在を調べるのが無理だと分かった役所からの帰り道。
メイは一生懸命、考えた。
……翔子から逃げる方法を……。
自分が家を出る。
あるいは、あの母親を殺す。
殺すのは無理だと思った。
翔子のそばには、だいたい、男がいる。
翔子が一人きりになることは少ない。
たとえ、翔子が一人きりでいる時を狙って襲ったところで、力の弱いメイは、翔子に倍返しされて終わりだと予想できた。


