しゃぼん玉


メイの表情は、今までで一番穏やかで、柔らかくて、美しかった。

リョウに想われていた。

気にかけてもらえていた。


そのことが、メイの心に刺さった無数のトゲを、丸い玉のようなものに変えていく。

傷ついて傷ついて荒れ果てた心は、いつしか限界を超え、丸く優しいものに形を変えるのかもしれない。


「リョウ……」

メイは、何度もその手紙に目を通した。

最初読んだ時には気づかなかったが、その便箋にはしゃぼん玉の写真が印刷されている。


あの日、リョウと一緒にやったしゃぼん玉。

メイにとって、特別な思い出があったしゃぼん玉……。


ミズキはメイの頭を優しくなで、

「その便箋、私があげたものなんだよ。

リョウに頼まれて。


それをあげた時、リョウ、すごく嬉しそうな顔してた」

「でも……。リョウはいない……。

こんな手紙だけ残されても、つらいだけだよ……」

メイの頭から手を離し、ミズキはメイの顔を覗き込んだ。

「メイちゃん。リョウは、ここにいるよ」

「え……?」

泣きはらしたメイの瞳が、ミズキのそれに合わさる。

「私は、リョウと同じ両親から生まれた。

リョウと私ね、血液型は違うけど、同じ親の間に生まれて、同じ環境で育ってきた。

血を分けた、姉弟なんだよ。

歳もひとつしか違わない。

小さい頃は、周囲の人達に双子と間違われてたくらい」

「……」