しゃぼん玉


メイは抵抗をやめ、ミズキの腕の中でおとなしくなった。

「穂積さん……。

メグルちゃんのおばあちゃんのことが、大好きだったんだね。

私でいいなら、どれだけ当たってくれてもいいよ。


ただ、これだけは分かってほしい。

私は、穂積さん……ううん、メイちゃんのことを恨んでなんかいない。

リョウが、大切に思っていた女の子だから……。


メイちゃんには、リョウの分まで幸せになってほしい。

心から、そう思ってる」

「リョウが、私を大切に……?」

メイはびちゃびちゃに濡れた頬を光らせ、戸惑う瞳でミズキの顔を見た。

メイの体からそっと腕を離し、ミズキはコートのポケットに入れていた“あの手紙”をメイに差し出した。

「四年遅れになっちゃったけど……。

リョウがメイちゃんに宛(あ)てて書いた手紙だよ」

水色と桃色のグラデーションがかかった背景に、しゃぼん玉の写真がプリントされている封筒を、メイに渡した。

アイリがマサヤの部屋で見つけた物である。


メイはおずおずとそれを受け取る。

少し日焼けしている紙面を見て、四年前にリョウが書いたものだと信じることが出来た。

メイは白くて細い指先で、四つに折られている便箋を丁寧に取り出し、開いて中を見た。