メイは、ミズキの腕の中で抵抗し、暴れる。
ミズキはしっかりメイを抱きしめ、思うことを全て正直に話した。
「……不幸を味わった人間は、人の不幸を喜ぶことができないんだよ。
少なくとも、私と私の友達はそう……。
私にとって、リョウの死が不幸なことだった。
あの時が、人生一のどん底で……。
それまでの平穏な生活も、全て狂って壊れていった……。
いろんな人に責められる中、リョウがいない現実と向き合わなきゃいけなくて。
毎日、お父さんとお母さんが泣く姿を見なきゃいけなくて。
これ以上の苦しみはないって思った」
リョウは、ミズキが物心ついた時から当たり前のように傍にいて、
毎日顔を合わせ、
同じ食事をし、
友達といる時のような楽しい日常を過ごした。
ミズキが中学生活最後の夏を迎えた時、突然、遠くに行ってしまったリョウ。
会いたいのに会えない寂しさ。
毎晩、夢に出てきたリョウの姿を追いかけていた。
夢で会えるのなら、一生夢の中にいたいとすら願った。
そんな、幸せとは言えない日々の中で、ミズキは、リョウを助けられなかった自分を責め続けた。
なぜ助けられなかったのだろう?
なぜリョウが死ななくてはならなかったのだろう?
なぜリョウは生きていないのだろう?
なぜ。なぜ。なぜ。
そればかりが、頭をはいずり回っていた。


