しゃぼん玉


メイはミズキを見下すように笑い、

「……無理。私、幸せなヤツが大嫌いだから。

親に愛されてぬくぬく過ごしてきたような甘いヤツに限って、内心人の不幸を喜んでたりすんだよ。

私は今まで、吐き気がするほどそういうヤツを見て来たんだ。

信じられねんだよ、

幸せ者の言葉も、

他人のことも……!」

乱暴な口調なのに、メイの頬には洪水のような涙が溢れていた。

ミズキは、肩にあるメイの両手を自分の手で包むと、やんわりと振りほどいた。

そのまま、震えているメイの体を抱きしめる。

「穂積さん。私は、穂積さんのことが好き。

穂積さんは、今までたくさん傷ついてきたんだね……」

「同情なんてすんな!

私はお前のことなんて大嫌いっつってんだろ……!

リョウのことで私を恨んでるくせに、いい人ヅラすんじゃねーよ!!」

メイの泣き叫ぶ声が廊下中に響く。

その場のみんなは、悲しみから涙をこぼした。


親に見放され、愛してもらうことが出来なかった子供の傷は、こんなにも根が深く、簡単に解決することはできない……。


ミズキの気持ちは、メイに届かないのだろうか……?

助けたいと願うのは、いけないことなのだろうか?

そういった気持ちは全て、「偽善」で片付けられてしまうのか?