しゃぼん玉


「幸せだよ、とても」

ミズキは正直に答えた。

メイには、嘘をつきたくなかった。


メイの声が震え、ミズキの肩には痛みが走る。

「……ざけんな」

「……」

「私は、あんなみたいないい子ぶった女が大っ嫌いなんだよ!

幸せなやつに、私の気持ちが分かるもんか!

同情なんてすんじゃねぇよ! うぜぇ!


幸せなヤツは、みんな死ねばいいんだ!

私以上に、不幸になればいいんだ!


あんたも、あんたも、あんただって……!」

メイは、その場にいる全員に向けて叫んだ。


「メイ……」

清が倒れる直前。

自室で聞いたメイの過去の話を思い出し、メグルは涙を我慢できなかった。


昔からメイの家庭環境を知っていたリクも、そう。

メイの苦しみから血が出ているように感じ、滝のような涙を流す。


ミズキの頬にも、あたたかいものが伝った。

リョウが亡くなった時の苦しみや、今ある幸せの尊さが胸に広がってゆく。


「穂積さんの苦しみ、私には分からない。

だから、偽善者って言われてもいい。

それでも助けたいの。ダメかな……?

穂積さんの苦しみ、私にも分けてほしい。

……お願いだから、私を嫌わないでほしい」