しゃぼん玉


マナとシュンが帰っていった後の松本家。

ナナセはリクの部屋で、彼に勉強を教えていた。


ナナセが見るまでもないほど、リクは学習内容を理解している。

“家庭教師なんて必要ないんじゃ……?”

壁にある掛け時計の針の音を耳にしながら、ナナセはそんなことを思った。

リクに勉強を教えることに不満があるわけではないが、こんなにスラスラ問題を解いてしまうリクに、家庭教師をつける理由が分からない。

それでも、頼まれた以上、放置するわけにはいかなかった。

問題集を解いているリクの手元を見ていると、リクはナナセの気持ちを読んだかのように、

「ナナセ君、ごめんね。

せっかく来てくれたのに、退屈でしょ?」

「ううん、そんなことないよ」

ナナセが慌てたように目を見開くと、リクは使っていたシャーペンをコロンと机の上に転がし、イスに座ったまま伸びをした。

「……父さん達、メイのことあまり良く思ってなくてさ。

最近俺、成績下がってたんだけど、父さんや母さんは、そういうの全部メイのせいじゃない?みたいに言い出して。

そう思われたくなくて、毎日勉強してた。

父さん達が寝た後に」

「……穂積さんのこと、大切に思ってるんだね」

どこか傷ついた顔をしているリクを思いやるように、ナナセはそう言った。