しゃぼん玉


「え……?」

メイの頭をなでるのをやめ、メグルは座り直す。

部屋の空気が一気に冷えた。


「メイ、それ本当なの?」

疑っているわけではないが、信じがたいほど衝撃的な話にメグルの声は震え、言いようのないショックで全身が浮き上がるようだった。

「ほんとだよ」

「体、大丈夫なの?」

メイの家には父親がいないことを知っていたが、メグルはそう訊(き)かずにはいられなかった。


「昔の話だし、今はなんともない。

そん時はそういう事よく分かってなかったし。

思い出した時に気持ち悪くなるだけ……」

「そんな……」

「ウチの親が離婚したのも、それが原因。

で、母親は私のことを嫌ってる。

父親の心と体を奪った私のことが、憎いんだって」

メグルは泣きながらメイの上半身を起き上がらせ、彼女の顔を覗き込む。

その顔はうつろだったが、悲しみや痛みといった情は感じられず、無表情に近い。


メグルは、メイが背負ってきたものを知って、悲しまずにはいられなかった。

たしかに、長い間、不思議に思っていた。

メイが誰とも深く付き合わず、幼なじみであるリクのことさえ遠ざけていることや、母親との不仲。


祖父母に愛されて育ったメグルにとっては、子供を愛せない親がいる、という事実は理解しがたいもので。

親、あるいは自分の家のように、血のつながった大人がその子供を可愛がるのは、当然だと思っていた。