あれは、本当に自分が体験したことなのだろうか?
改めて思い返してみると、メイは疑問に思う。
夢でも見ていたのではないかと疑ってしまうほど、今のメイから見て、あのクリスマスは幸せだった。
彼女にとって、それ以外の現実は、ただ冷たいだけのものだったから……。
思い出の中の自分と今の自分に天と地ほどの差を感じていると、玄関口から物音がした。
さわがしい声。
メグルが帰ってきたようだ。
常に人よりテンションの高いメグルは、バイトを初めてから、さらにその度合いが加速している。
メイは、手にしていたクリスマスブーツを慌てて紙袋の中にしまい、ベッドの上で壁側に向いた。
「メイ! 聞いてよぉ!」
メグルは部屋の扉を勢いよく開けると、戸惑いを隠せない声音で、街で見かけたリクのことを話した。
メイは無関心な態度を貫き、
「ばあちゃんに聞いたから知ってるー」
と、メグルの話を止めた。
「そっか、そうだよね!
あたしさっきばあちゃんに電話したんだっけ」
メグルはケラケラ笑いつつ、メイが清のことを「ばあちゃん」と呼んだことに驚き、明るい口調で、
「なんか嬉しい!」
「なにが?」
「メイって、今まではさ、ばあちゃんのこと、『あの人』とか、『ばあさん』って、他人みたいな呼び方してたじゃん?
だけど今、ばあちゃんって呼んでくれたから、嬉しいよっ」
「実際、他人だし」
メグルの顔を見ないまま、メイは相変わらず抑揚(よくよう)のない声で返した。


