宇都宮は不安定な体勢で立ち上がると、首を左右に動かして骨を鳴らし、リク達が去る後ろ姿を見ていた――。
リク達は、宇都宮を見逃すことにした。
今、宇都宮を捕まえて、何もかも警察に話せば良かったのかもしれない。
だけど、そうすれば、メイの母·翔子のことも自(おの)ずと調べられるだろう。
翔子が捕まったところで、メイの家庭の問題は何も解決しない。
翔子が改心する保証もない。
宇都宮という悪人が捕まるのは世の中のためでもあるし、メイの身が売られるという危険もなくなるが、それだけでは解決しない心の問題が残ったままになる。
翔子とメイが打ち解ける方法。
……それが見つかるのかどうか誰にも分からなかったが、翔子が捕まってしまったら、メイは《犯罪者の娘》というレッテルを貼られてしまう。
どこへ行っても、その事実は付きまとい、メイの足枷(あしかせ)となるだろう……。
母親に愛されなかった上に、その母親が犯した罪のせいで苦労するなんて、あってはいけない。
メイにこれ以上、茨(いばら)の道を歩かせてはならない。
「幸せになるために生まれてきたはずなんだ、メイも……」
リクは小さくそうつぶやいた。
警察に頼って綺麗に物事が片付くほど、人の心は単純なものではない……。
リクをはじめ、マナとシュンも今までの経験でそれを実感していた。
事件を解決して全てスッキリするというのなら、世の中の全員が幸せそうに笑っているに違いない。


