「遅れてすみません。
すっかり忘れてしまっていて……」
松本家に着くなり、ナナセは出迎えてくれたリクの母·正美に平謝りした。
今日の夜からリクの家庭教師をしなくてはいけなかったのに、ミズキと仲直りできた喜びですっかり忘れていた。
ミズキは事情を理解してくれ、すぐにリクの家に向かうようナナセ気を遣ったが、彼女一人で夜道を歩かせるわけにもいかないので、ナナセはミズキを家まで送り届け、こうして慌てて松本家に訪問した次第。
だが、ナナセは思ってもみなかった事態に直面した。
『ナナセ君、早く来てくれない?』
さきほど、電話口で口早にそう告げたのは、義弘のケータイを使って連絡してきた正美だった。
ナナセはてっきり、家庭教師の時間に遅刻したことを正美や義弘に厳しく注意されると思っていたのに、その予想は切られた。
玄関先でナナセを迎えるなり、正美は顔色を悪くし、
「ナナセ君、せっかく来てくれたのにごめんなさいね。
実は、リクがまだ帰ってきてないの……。
今、あの人が探しに行ってるんだけど……」
と、義弘がリクを探しに行っていると言った。
ナナセは正美の心境を察し、
「俺も探しに行ってきます」
松本家を後にした。
“リク君、もしかしてバイトしてるのかな……?
シュンから聞いた話だと、メグルちゃんと一緒に居酒屋で働き続けてるみたいだし……”


