ミズキは嬉しそうにナナセを見つめ、
「ナナセ君、こっち見て?」
と、ナナセの手をにぎりしめ、少しずつナナセの顔に近付く。
「ミズキちゃんっ……」
ナナセの手が、微かに震えていた。
ミズキの甘い匂いと柔らかい手のひらの熱に触れ、ナナセの中に、またひとつ新しい感情が芽生える。
ドキドキして苦しいのに、決して嫌な気持ちではない。
ミズキの唇がナナセのそれまであと数ミリ…という所まで近づいたかと思うと、それはスッと離れていった。
ミズキはナナセの肩に頭をおき、
「なんてねっ。ちょっと、ナナセ君に意地悪したくなっちゃった。
しないよ、ナナセ君が嫌がることは」
ミズキの口調は何かに吹っ切れた様に明るくて、それでいて穏やかなぬくもりがあった。
ミズキは、ナナセが女性に恐怖心を持った理由を忘れてはいない。
こうして抱きしめ合える距離で彼の隣にいられれば、それだけでよかった。
「ナナセ君の手、あったかい」
そう言いミズキは、嬉しそうにナナセの手を両手でにぎりしめる。
川から吹いてくる風のせいで、普通なら寒いはずのに、ナナセの体はほてっていた。
ミズキの唇が離れたことに、安心というより残念な気持ちになる。
「嫌じゃ、ないよ……」
気がついたら、そう口にしていた。
ナナセ自身、そんな自分の言葉にかなり驚く。
“いま俺、何て言った?”
心拍数が急激に上がる。


