しゃぼん玉


「お前、すっげームカつく」

ヒデトはナナセを睨みつけたまま、低い声で言った。

「本当なら拳で殴りたかったけど、そんなことしてお前を傷つけたら、ミズキはお前のこと心配して手当とかするんだろなって思ったら、手加減するしかなかった」

そう言って大きく息を吐いた後、

「お前みたいなヤツがミズキの彼氏なんだと思うと、すっげえ腹立つ。

ミズキのこといろいろ知ってるくせに、過去の話とか聞いてるクセに、何でここまで放っておいたんだよ!

ふざけてんの?

ミズキなら許してくれるとか、甘いこと考えてたわけ?」

「そんなつもりは……」

一気にまくし立てられ、ナナセはそう返すのが精一杯だった。

ヒデトのこめかみには、怒りのせいで血管が浮き出ている。

「ミズキはお前に距離置かれても負けないで、夢のために一人で勉強してたんだ。

絶対寂しいはずなのに、そういうの全部我慢して……。

そういうミズキのつらさ、お前ホントに分かってんの?

どういうつもりか知らねえけど、もう二度とミズキにあんな顔させるんじゃねえ!

俺にはお前の良さなんてちっとも分かんねぇけど、ミズキはお前がいいって言ってんだ。

大切にしないんだったら、付き合う資格ねぇよ!

もし今度同じことしたら、タダじゃおかねぇからな!」

「……」

言いたいことを全てナナセにぶつけたのに、ヒデトのモヤモヤはおさまらず、彼はナナセに背を向けると、道端に落ちていた小石を思い切り蹴飛ばした。

その後ろ姿を見て、ヒデトがどれだけミズキを好きだったのかを、ナナセは思い知った。