ミズキの自宅前に伸びる路上。
そこにつながる大通りの歩道で、ナナセは一人の同世代の少年とすれ違ったが、ミズキの事で頭がいっぱいで、その少年の顔まで見ていなかった。
「おい!」
急に背中から声が飛んできたので、ナナセは思わず振り返る。
10メートルほど向こうに、ヒデトが立っていた。
この間、駅の校内でミズキと一緒にいた二人の少年のうちの、一人……。
見覚えのある顔に、ナナセは見入った。
ヒデトはツカツカとナナセに近付き、眉間にシワを寄せたままナナセの頬を思い切りひっぱたいた。
渇いた音が、閑静な住宅街の空気に吸い込まれていく。
「……!」
大通りを走る車の音と夜闇の中で、ナナセはただただ驚いて、その少年の顔を見つめた。
「俺、宮原ヒデト。
前に、ミズキと付き合ってた。
お前のこと、だいたいは知ってる」
「宮原、君……?」
ナナセを睨みつけるように仁王立ちしているヒデト。
その様子から、ヒデトが相当怒っているのがナナセにも伝わっていた。
それは、さきほどジムに訪ねてきたシュンが発していた空気と同じ色をしている。
ナナセはミズキの元カレの存在を知ってはいたものの、その人とこうして対面し殴られるとは思っていなかったため、困惑した。
叩かれた頬を風にさらしたまま、ヒデトを見つめる。


