ミズキは、ヒデトからされそうになったキスを寸前で拒否した。
もし、ナナセと出会う前にそうされていたら、情に流されヒデトを受け入れていたかもしれない。
一度は好きになった人。
そう思い、もう一度ヒデトの手を取っていたかもしれない。
けれど今は、胸にいるのはナナセだけ。
それ以外は考えられない。
ヒデトには、正直な気持ちを話して帰ってもらった。
もう、迷わない。
弱い自分を受け入れ、それをさらけ出してみせる。
そうして大切な人達と向き合っていく。
“本当の意味でナナセ君と向き合えない私なんかが、臨床心理士になんてなれるわけがない。
穂積さんを助けられるわけがない”
弱い自分も、
人を憎む自分も、
誰かを救いたい自分も、
全て偽りのない本当の自分。
良い面だけ見せて人との関係を取り繕うだなんて、間違っている。
悪い感情も全てひっくるめて、ミズキの姿なのだから。
“ありのままの私でいこう。
「こんな自分見せたら嫌われる」とか、そんな打算はもう無し!
甘える時は甘えて、
支えたい時は支える。
それでいいじゃん。
ナナセ君ならきっと、受け入れてくれる……。
マナが私を受け入れてくれたように”
ナナセとの電話を終えて自宅で彼を待つ間、ミズキはそんなことを考えていた。


