「大丈夫っ」
シュンは余裕たっぷりの笑顔でマナにウィンクした。
マナはげんなりしてため息をつく。
ナナセはうつむいてしまった。
「何のためにジム通いを始めたのか、忘れたわけじゃないだろ?」
「……」
「ミズキのために、ミズキを守るために強くなりたくて通い出したんじゃなかったのかよ」
「……そうだよ。ミズキちゃんのために……」
ナナセの言葉は、アイリの胸に鋭く刺さった。
背中を貫くような痛みと共に、ミズキには敵わない、という想いになる。
シュンは一瞬アイリを見てからマナの手を引き、ナナセとアイリの横を通り過ぎようとする。
「俺、ミズキのために陰で努力してるお前の姿好きだったのにな。
……リクんち行くのは勝手だけど。
ミズキのこと失くしてから泣きついてきたって、知らないからな。
前にも言ったけど、状況は常に変わってるんだ。
ミズキも時間も、待ってはくれない。
それだけは知っとけ」
それだけ言い残し、シュンは前を向きながら片手をヒラリと振った。
ナナセはシュンの言葉を聞いて、ギュッと両手の拳をにぎる。
“ミズキちゃん……”
シュンとマナの姿が見えなくなってから、ようやくナナセは走り出した。
アイリをその場に残して……。


