ケーキ屋を出た二人は、すっかり薄暗くなった街道に目をやり、電車に乗るため、駅のホームに入っていく。
その間、再び会話がなくなった。
気まずい感じの沈黙ではないが、何か意味を含んだような静けさ……。
ミズキはなぜか、帰宅ラッシュで人通りが多いのが救いだと感じた。
ホームにはサラリーマンや高校生、OLの姿がたくさんあったのに、ミズキ達が乗った電車の乗客は少なかった。
二人は、他にたった三人しか乗っていない車両に乗り込み、車窓に沿って設置されている10人掛けの椅子の中央に座った。
その間も、二人の間に会話は生まれず、電車が発車してからも、ただただ窓の外に映る夜の景色を眺めているだけだった。
そんな調子のまま、ミズキの自宅前にたどり着く。
「送ってくれてありがとう。じゃあね」
「ミズキ……」
玄関に向かおうと、ミズキがヒデトに背中を向けた時、ヒデトは背後から彼女を抱きしめた。
体にしみ入ってくる懐かしいぬくもりに、
記憶の奥に重なる彼の息遣いに、
ミズキの頬には涙が流れた。
知り過ぎているヒデトの腕の中に安心した自分が許せなかった。
その反面、ナナセと通じ合えないことの寂しさが胸を染めていく……。
「この間からずっと考えてた。
ミズキ……俺達、やり直さない……?」
「……」


