大学を出ると、ヒデトとミズキは駅に向かって歩いていた。
ミズキは断ったのだが、ヒデトはミズキを自宅まで送ると言った。
「もうすぐクリスマスだな」
ナナセの話題に触れないよう、ヒデトは明るい話題を振る。
ミズキはそれに空返事をした。
しんみりした二人の空気とは真逆の、チカチカした眩しい電飾が、街のあちこちに散りばめられている。
「そういえば、中学ん時、よくあそこでケーキ食ったな」
ヒデトは駅前のケーキ屋を指さした。
付き合っていた頃、何度か二人で入った店――。
二人はそのまま、なんとなく、そのケーキ屋に入る。
街に漂うクリスマスムードに魅(み)せられたのだろうか?
それとも、付き合っていた時の思い出に触れるため……?
丸太小屋で出来た牧歌的な建物の中は、柔らかいオレンジの光が満ちていて、あたたかい雰囲気だった。
お互いに、別れて以来、ここに来たことはない。
「おいしい……」
運ばれてきたケーキのまろやかさと、ノドを潤す紅茶の香りに、無口だったミズキも笑みをこぼした。
「うまいな。
なんか、幸せ……」
ヒデトはミズキの反応に嬉しそうな顔をし、ケーキを頬張る。
“私とこんな事してていいの?”
“彼女の事は、大丈夫なの……?”
今までなら、そう尋ねることで、ミズキはヒデトと距離を取ることができた。
でも、ユウから本当のことを聞いてしまった。
ヒデトは今でもミズキの事を想っているのだと……。
もしミズキが何も知らないフリをして「ヒデトの彼女」の存在を口にしたら、良くない方向に話が進んでしまう予感がする。
ミズキは成り行きに身を任せるしかなかった。


