“ミズキちゃんが、うらやましい……。
こんなに優しくて真面目で誠実なナナセ君と付き合えてるんだから。
二人はお似合いだよ、とても。
……でも、こうやってミズキちゃんがナナセ君を放っておくのなら、私……”
アイリはベンチのそばで立ち尽くすナナセを、横顔で振り返った。
「私、うまく泳げないんだ。
ナナセ君、教えてくれない?」
「うん、いいよ」
アイリは嬉しそうに笑うと、濡れているナナセの手を引いた。
「アイリちゃんっ……!」
思わず手に触れられたことで、ナナセは動揺した。
ミズキ以外の女の子とこうしているなんて……。
ミズキが他の男子と一緒にいるのを見た時のように、胸が痛んだ。
この手は、ミズキのためだけにあるはずなのに。
ミズキを抱きしめるためだけに空けておいたのに……。
そのままナナセをプールの中に引き込んだアイリは、ナナセに甘えて彼に両手をにぎってもらい、泳ぐ練習をする。
ナナセは、小学校の体育教諭にでもなった気分だった。


